2017年11月30日

下顎前突症 その7

28歳 社会人女性 
患者さんの訴えでは、前歯が”受け口”状態であることと、凸凹の改善
を主訴としておいでになりました。


治療前
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お口元の写真
やや受け口の骨格をしておられるようにお見受けします。
下の唇がやや出ているように見えます


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お口の中の写真 
上顎前歯の2本が内側に入り込んでいます。 
下の前歯が大きく見えます、なぜでしょう?
良くみて下さいね。 
上顎で小臼歯が2本、下顎で前歯(側切歯)2本が足りません。 先天欠如
といって生まれつき歯の数が少ないのです。

上顎の歯は前から 1234 678となります。
下顎の歯は前から 1 345678となります。

このように歯の種類が上下で異なる場合にはボルトン分析が有功です。 
症例の難度は高いですが、原則どおりに行えば良好な治療結果は約束
されています。


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治療方針
上下顎の第三大臼歯4本を抜歯します。
下顎の歯列全体を後方へ移動させます。これに加えて、ボルトン分析★は
  ”下顎の前歯が6.2mm大きい”
と結果をだしています。下顎のどこかの歯の幅を小さくしないといけません。
つまり、”歯を削る”必要があるのです。 

歯を削るには抵抗感がありますが、そうしないと上下の歯が正しく咬みこ
みません。さあ、好田先生はどうしたのでしょうか?


治療後
1年8ヶ月の動的治療を行いました。

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お口元の写真 
変化が明瞭ではありません、元々から整ったお口元でした。
上唇が少し前に出て、下唇部分が引っ込んだように見えます。


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お口の中の写真
奥歯の上下のかみ合わせは、1対2歯に咬みこみ良好な状態です。
この方は、最初に述べたように受け口の骨格です。下顎前突症といいます。
上顎よりも下顎の方が前にあります。こういう人の場合、治療が終えたと
きの前歯の傾斜は写真のようになります。上顎前歯は傾斜して前へ、下顎
前歯は内側に傾斜する。これは骨格に合わせた前歯の配列の仕方で、この
原則を大きく変更することはできません。制限のある中での治療ですが、
よくできたと思います。医療というのはこのように制限のある中でどれだけ
頑張るかということです。全員の方が皆様同じようになるのではないのです。


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評価
ボルトン分析が下顎の6本の前歯犬歯が6.2mm大きいといったとしても、
それほど歯を削れるわけではありません。
無茶すると虫歯になってしまいますからねえ。
エナメル質を少し薄くする程度なので、犬歯と第一小臼歯に少しずつ分散して
3mm程度削りました。治療前後の写真を見比べるとわかりますよ。

”麻酔はしたかって?” 麻酔はしません。 
”痛いんじゃないかって?” 痛くありません。 

痛みの出ない範囲で行います。 それが削りすぎない安全なやり方です。 
削った部分は丁寧に研磨して、フッ化物で虫歯予防をします。
ご安心下さい、虫歯にはならないですね。


患者さんのご感想
治療の進め方や、現時点の結果について
 結果にはとても満足しています。期間も思ったより短かったです。


先生への言葉
 治療が始まる前に、他に2か所に相談に行きました。 (今ならもう言っ
てもいいでしょう?)そうしたら、1ヶ所目は ”手術をしないといけないか
もしれない。”  といわれました。2ヶ所目は、 ”こんなのは診たことが
ないので、できるかどうかやってみないと判わからない” と言われてとて
も不安になっていました。好田先生は、”こうすれば治る”ということをと
ても合理的にお話していただいたので、安心して治療をお任せできると思い
ました。 実際の治療では手術も必要なかったし、割と楽にすすんだのに、
前の2か所の説明は一体何だったんだろう、とも思います。

矯正の先生の腕が変わればこんなにも治療がかわるのか、と驚きます。 と
同時に、先生のおかげで私はとても幸福な結果を得られたのだと嬉しく思い
す。

 
好田先生から
ボルトン分析を行うことが的確な治療方針を明示してくれます。 
経験をつめばあえてこの細かな分析を行わなくても、下顎の歯の要素(成分
)が大きいことは容易に予測がつきます。 でも、実際に計測して客観的に
見て頂かないと患者さんは納得がゆかないでしょう?


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●ボルトン分析
1959年にワシントン大学のBolton助教授によって考案された分析
方法です。 ノギスをあてて歯の幅径(はば)を計測してゆきます(写真)。

上下顎12+12本でみる場合と、上下顎前歯のみ6+6本で見る場合があり
ます。 歯の幅を計測して上顎のすべての歯の幅の合計値と下顎の合計値の
比率をみて判断をします。 正常な場合には一定の比率になることが知られ
ています。 この比率に比べて当該の症例がどうかを比較するのです。 

今回は両方の場合で検討をしました。 いずれも下顎の歯の幅の合計が大き
いと分析されました。
コンピューターの時代にクラッシックな方法ですが、人の体には今も昔もな
く、地味ですが大変に的確な良い分析です。 これはかなり細かくて面倒な
作業ですが、地道に行わなくてはならないことです。 
この分析によって、自分が何を行えばよいのかが簡単にわかります。
また、話がとても合理的なことになので、患者さんに納得していただくのも
容易です。この症例では、6.2mmの問題点を3mm削ることで解決しまし
た。あと3.2mm分の問題が残っているので、全体として少し浅いかみ合わ
せになっています。 しかし、これ以上削ることは無理と思うので、この程
度なら辛抱できる範囲と判断しました。


治療後10年経過
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お口元の写真 
変化はほとんどありません。いつまでもお若いですねえ

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お口の中の写真
 奥歯の上下のかみ合わせは、1対2歯に咬みこみ良好な状態です。治療が
終了したときとほとんど変化がありません。
虫歯も増えていませんし、歯肉も良好に見えます。
このようにうまく経過することは少ないです。多少は動いてしまうことはあ
ります。この方が、保定装置(リテーナー)をしっかり使って頂いているか
らかもしれません。


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【治療例(下顎前突症・受け口)の最新記事】

叢生・でこぼこ症例 その4

16歳 高校生男性 
患者さんとお母上様のご希望は”歯の凸凹を治したい”ということです。 

治療前
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お口元の写真
下の唇がやや出ているかな、という感じを受けます。 横顔と正面から
見ると、オトガイ部の軟組織はやや緊張がみられ上下の唇が閉じにくそ
うです。 おそらく、上の前歯の先端部が下唇に当たっているため下唇
が突出した感じになると思われます。
 

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お口の中の写真 
まあ! 確かに凸凹ですね。
上下顎ともに前歯に叢生(凸凹)が目だちます。 上の前歯2本の捻転が
ひどく目だちます。 また、奥歯も個々には捻転(ローテーション)して
います。奥歯は大きな歯なので、捻転していると改善には意外と時間がか
かる場合があります。この程度のものはよくある症例で、比較的簡単で苦
労なく治るケースですね。


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診断
この症例の分類は叢生症例という分類です。 
顎の骨にくらべて、歯の成分(数と大きさ)が大きすぎます。

治療方針
上下顎左右側第一小臼歯4本を抜歯して、通常の矯正装置によって治療を
行いました。叢生の程度だけから判断すれば、非抜歯(歯を抜かない)に
よる方法も考えられます。ご希望に応じて対応できる範囲と考えます。

 
治療後
2年2ヶ月の動的治療を行いました。 
決して患者さんがサボったわけではありませんが、クラブ活動をしながらで
の治療なのでこの程度は普通と思われます。


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お口元の写真 
下唇の突出は改善されたようです。 オトガイ部の軟組織は緊張がなくなり、
オトガイの自然なふくらみが得られています。 
非抜歯の治療を選択することもできる、と治療前の治療方針で書きましたが、
非抜歯ではこのお口元を達成することはできなかったかもしれません。


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お口の中の写真
上下前歯の状態はたいへん良くなりましたね。 見た目にも、咬合機能から
みても完璧です。 特に上下の奥歯のかみ合わせは緊密になっています。  
歯の裏側に茶色く色素が沈着してきています。 ウーン。 タバコをすって
るのかなあ?

 
下の前歯の歯肉が退縮し、歯と歯に三角形の空隙が生じています。 元々、
下の前歯に叢生があったのですが、叢生を治療すると歯肉が退縮したように
見えてしまいます。 叢生で歯と歯は接近した状態では本来あるべき歯肉が
存在しません。 歯肉が”ない”のです。 
治療によって叢生が解消され、歯と歯の距離が本来のものになっても元々歯
肉がないので空隙が生じてしまいます。 成長期にあれば多少の回復は考え
られますが、この方には十分ではありませんでした。 できればあと数年以
前に取り組んでいれば・・・・。 可能であれば小学生のうちにできていれ
ばよかったと思います。 


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評価
全体のバランスからみれば欠点をおぎなって余りある治療結果が得られて
いるので良い治療ができたと思われます。
医療は個人差がありますので、結果は必ずしも同じになるわけではありま
せん。しかし、この程度の叢生(でこぼこ)症例は、ほとんどこの程度に
は治すことができます。







posted by doc at 13:57| 治療例(叢生・でこぼこ)

2017年11月28日

叢生・でこぼこ症例 その3

30歳 成人女性 
患者さんのご希望は歯の凸
凹を治したい、ということです。
 うーん、かなりきてますですね。 上下とも左がわ(向か
って右がわ)の犬歯2本の位置異常が目立ちますね。
このような犬歯の状態を”低位唇側転移”といいます。
簡単に言えば”八重歯”という表現がそっくりあてはまり
ますが、これを”かわいい”と思っている人がいまだにた
くさんおられます。 困ったことです。 さて、この方小
さなお子様がおられるのにかかわらず、ご遠方より通って
いただき、しかも大へんまじめで治療に理解のある患者さ
んでした。
 

治療前
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お口元の写真
特にひどいというわけでは
ありませんがやや骨格性下顎前突症(受け口)の傾向がう
かがわれます。 ほっぺたの前へのふくらみが少なく(正
常であれば英文字の”D”のように前へふくらむ)、ペタン
としています。 これをストレートタイプの側貌といいます。


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お口の中の写真 
先に述べたように上下の左
側(むかって右側)犬歯2本が低位唇側転移し、上の左側の
側切歯(2本目の前歯のこと)が内側に入り込み(舌側転
移という)、下の前歯と反対にかんでいます。 上の右側
(向かって左側)側切歯(2本目の前歯)も内側に向かっ
て生えています。 いずれも、骨の幅(大きさ)に対して
、生えている歯の大きさが大きすぎることが原因です。


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上から見た写真をご覧ください。 歯が凸凹しているのが
よくわかりますね。 正面から見るよりもわかりやすいと
思って、上下の全体の写真を入れてみました(重くなって
申し訳ないですが・・・。)。 歯の裏側を見ると、茶色
く色素が沈着しています。 おそらく、歯ブラシが行き届
いていないのでしょう。 これだけ凸凹にならんでいると
、歯ブラシをいくら一生懸命努力しても限界があります。
 だから、このままの状態を続けると将来、歯ブラシ不足
の場所から歯肉炎(はぐきが赤く腫れて出血する)や歯周
病(歯肉炎が更に進行し歯の周囲の骨が破壊される)を引
き起こす原因となってしまいます。 この病気を予防する
ためには、矯正治療はとても有効な手段です。

 
先ほど、この方骨格性下顎
前突症(受け口)の傾向がうかがえると申し上げました。 
あれ、前歯は”受け口”じゃないのに? 不思議だな? 
とお思いでしょう。 上あごの歯列に比較して下あごの歯列
が広く並んでいます。 上あごの歯列の横幅が狭いことが原
因のひとつです。 この様なことはまま見受けられることで
、治療を難しくするひとつになる場合があります。
 
 
診断と治療方針
症例の分類は叢生症例という
分類で、骨格的には下顎前突症の傾向を持ちます。 上下顎
左右側第一小臼歯4本を抜歯して、エッジワイズ装置によっ
て治療を行いました。 上顎の歯列を広げ、下顎の歯列を狭
くしました。


治療後
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治療期間 2年1ヶ月
動的治療は、時間を十分に
かけて細かく治療を行った結果のわりには短くできました。

お口元の写真 
大きな変化はないようです。 

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お口の中の写真
上下前歯の状態はたいへん
良くなりましたね。
 皆様いかがですか? 見た目にも、咬合機能からみても
完璧です。 
 歯の裏側の茶色く沈着した色素も取れてきているように
見えます。 きっと、この方の歯ブラシが効果を上げてい
るためと考えられます。 下あごの着色はほとんどなくな
りました。 先にこの方はまじめな患者さんだと述べまし
たが、私の言うアドバイスをよく聞いていただき、歯ブラ
シの努力をして下さいました。 このようなまじめな患者
さんにはこちらも努力を惜しみません。


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この程度の仕上がりの良さの割には、治療期間は短い目
です。 細かい部分まで時間をかけて処置を重ねること
ができました。 
  成人の矯正治療では、患者さんのニーズに合わせた治
療が必要です。この方は治療期間よりも治療内容を重視
されたので、その方向に沿って治療をさせていただきま
した。 
治療にたいへん協力的で、治療内容への理解も深かった
ですね。 この様な望みをお持ちの方には私は自分の技
術、知識、経験を出し惜しむことは一切しないことにし
ています。これも私のコンセプトのひとつです。
 

経過5年5ヶ月後
DSC_1137.jpgDSC_1135.jpgDSC_1138.jpg
お口元の写真装置を撤去後5年5ヶ
月です。現在も保定が行われています。いやー、いつ
までも若々しいですね! お年を取られた感じが全く
しないですね。


DSC_1127.jpgDSC_1129.jpgDSC_1131.jpg
お口の中の写真

歯列の状態は良好に推移しています。
元々、叢生がありましたので時間がたつと再び叢生が
戻ってくることがありますが、この症例は全くその傾
向が見られません。歯の裏側の清掃も抜群です!
歯列が整えば、清掃はやりやすくなります。


ご本人がまじめで、リテナー(保定装置)をしっかり
と使用していただきます。 週に数回ですが夜のみの
ご使用をしていただいています。 良い結果が維持さ
れています。
まじめな方には、必ず幸運が訪れるのです!


残念な点もあります。(右上)
上下前歯の中心が少しくるってきています。 治療開
始時もくるっていましたが、その方向に戻っています。


の理由を考えます。
左右の奥歯の咬合状態をご覧下さい。(右中下)
治療終了時よりも上下の奥歯がしっかりと咬み込んでき
ていると見られます。 このこと自体はとても推奨され
るべきことです。 
しかし、その咬み込みの量が左右で少し異なったため、
左右のずれが発生したものと推測されます。


DSC_1132.jpgDSC_1133.jpg
評価
100点満点中95点
でしょうか・・・。
前歯の中心のずれがなければ満点でした。
しかし、5年を越えてここまで治療結果が維持されるの
はすごいことなんですよ。




posted by doc at 20:51| 治療例(叢生・でこぼこ)