2017年12月08日

上顎前突症 その15

●上顎前突は上顎の骨や上の前歯が出ている状態

25歳 歯科衛生士
この方は、歯科業界のプロです。
何のごまかしも効きません。この方の勤務先の歯科医師も皆が見ています。
とてもプレッシャーのかかる治療です。


治療前
DSC_2865.jpgDSC_2866.jpg
お口元の写真
お口元が出ていることを気にされています。
この程度なら、気にならない方も多くおられるでしょう。
ご本人は何も言わないですが、赤唇(唇の赤い部分)の厚みがやや厚いよう
に見えます。これは私の主観です。
オトガイの形が少しもっこりした感じがありますねえ。


DSC_2856.jpgDSC_2854.jpgDSC_2852.jpg
お口の中の写真 
 上下歯列ともに叢生(でこぼこのこと)があります。上顎の叢生は中程度で
前歯に集中しています。下顎前歯の叢生は軽度です。上下顎とも、この程度の
叢生を改善するには抜歯は必要ありません。
 しかしながら、もし非抜歯で治すと上顎前歯の傾斜が増して前へとびだして
いしまいます。お口元は今以上に突出してしまいます。
 しかも、上下顎の奥歯のかみ合わせは、上顎の奥歯が前に来るような不正咬
合になっています。この状態をClass II 咬合と言っています。
 この二つの理由で、上顎左右の第一小臼歯を抜歯することにします。下顎の
抜歯はしません。
 それから、上下前歯のかみ合わせがとても深くなっています。上顎前歯が下
顎前歯を覆い隠すようになっています。この状態を過蓋咬合(かがいこうごう)
と言っています。この改善は難度が高くなります。 
 症例の難易度はかなりの難度になります。程度は中程度から高難度になります。


DSC_2857.jpgDSC_2858.jpg
診断 
前歯の過蓋咬合と叢生を伴う上顎前突症
治療方針
1上顎前歯のねじれを改善します。まず、上顎第一小臼歯を抜歯してねじれを
 取り除きます。この時に歯科矯正用アンカースクリュー(ミニスクリュー、TAD、
 矯正用インプラントのこと)を併用して、上顎前歯を圧下(骨にめり込ませる)
 を行います。これにより過蓋咬合により改善されてゆきます。
 下顎には当面は装置がつきません。まずは上顎のみを治療してゆきます。 
2上顎前歯を後退させてゆきます。この時にも歯科矯正用アンカースクリューを
 併用します。もし、この方法を併用しないと、上顎奥歯が前に出てくることが
 あります。これが過剰に生じると、前歯がへこまないで終わってしまいます。
 これを避けるために安全を考えて使っています。
3下顎にようやく装置をつけます。


治療中1
DSC_4023.jpg
上記の治療方針の1を進めています。
上顎前歯を圧下(骨にめり込ませる)しようとしています。
使用している装置は、セラミック製装置です。今は使用していません。
当院では今はもっと新しいセルフライゲーションタイプのセラミック製装置を
使用しています。


治療中2
DSC_7344.jpg
上顎前歯の圧下が進みました。
上顎前歯の傾斜がが増しています。これは現時点ではかまいません。
こうなることは計算済みです。
上顎前歯を後退させます。このときにも歯科矯正用インプラントアンカーを使用
しています。この写真にはたまたま写っていません。

治療中3
DSC_0341.jpg
上記の治療方針3に入ります。
いきなり下あご全部には装置はつけません。ここには院長の玄人気質の工夫が
出ています。
上下のゴムを併用しながら、下顎小臼歯と大臼歯のみを配列しています。


治療中4
DSC_1695.jpg
ここでようやく下顎前歯6つに装置が着いています。
上下のゴムはまだ使っています。
上顎前歯の後退は進んでいます。


治療後
3年0か月の治療を行いました。
DSC_6393.jpgDSC_6394.jpg
お口元の写真
お口元の突出は改善されました。上唇がへこんだようです。
赤唇がやや薄くなったように見えます。見えませんか?
オトガイの形が綺麗になりましたね。上下前歯がへこみますと、
お口を閉じるときに唇が引っ張られないのでオトガイが本来の
美しい形に成り易いです。


DSC_4552.jpgDSC_4548.jpgDSC_4550.jpg
お口の中の写真
 上下歯列とも叢生が改善されてきれいに並んでいます。
前歯の咬み合わせは、元よりもうんと浅くなり過蓋咬合は改善されました。
上顎前歯の傾斜もいいですねえ。
 上顎の奥歯に白い詰め物があります。これは仮詰のものです。治療中に金
属の詰め物が外れてしまいました。
 矯正後に適正なものに作り替える予定です。このように矯正の途中でもカ
リエス治療は可能です。


DSC_4553.jpgDSC_4554.jpg

評価
 左はスーパーインポーズといって、治療前と治療後のセフアロというレ
ントゲンを重ね合わせて治療での変化を調べることができるものです。
黒い線は治療前、赤い線は治療後です。
 上顎前歯がいかに移動したかがよくわかりますね。
前歯の傾斜度を変化させずに、後退と圧下が行われています。
みっず色の線がありますね。これは治療途中の状態です。これは上記の治
療中1の状態に近いです。

重ね合わせs.jpg
 上顎前歯を一旦前に傾斜させて出します。この時に歯根の先は後方へ下が
ります。これを狙ってあえてこういう風にします。
 次に前歯を傾斜で後退させます。これが終了すれば、黒線から赤線への変
化となります。治療療期間が.3年0か月とはやや長い目です。
 しかし、上顎圧下と難易度の高さから適正な治療結果と考えます。
この症例は2012年の学会に発表しました。自信作です。)実は、従来型の治
療では上顎前歯の圧下というのはほとんどできない内容で、今回の治療結果
は夢のような目標でした。
 ところが、矯正用アンカースクリュー(ミニスクリュー、TAD、矯正用イン
プラントのこと)の出現が矯正の治療内容を一変させました。
 現在は本当に良い治療ができるようになりました!
皆様もご安心で治療が受けられると思います。




2017年12月01日

下顎前突症 その8

26歳 社会人女性 
患者さんの訴えは、前歯が”受け口”です。

治療前
DSC_3657.jpgDSC_3656.jpgDSC_3658.jpg
お口元の写真
やや受け口の骨格をしておられるようにお見受けします。
下の唇とオトガイが前に出て、下唇が上唇よりぶ厚く見えます。


DSC_3661.jpgDSC_3664.jpgDSC_3668.jpg
お口の中の写真 
上顎前歯の3本が内側に入り込んでいます。 
上顎の左側(むかって右側)の犬歯が上の方にあって強い違和感を与え
ています。


DSC_3669.jpgDSC_3670.jpg
上下の奥歯の咬合関係は、下顎奥歯が少し前に出ているようです。 また、
下顎には第三大臼歯(親知らず)が少しだけ顔をのぞかせています。
 

治療方針
こういうケースは、見た目以上に易しいので安心です。
下顎の左右の第三大臼歯(親知らず)2本を抜歯します。 下顎の歯列
全体を後方へ移動させます。同時に、内側に向いている上顎前歯3本を
前に出します。 方針はこのとおり、とても単純で明快なものです。
下顎前突症例は、この症例のように小臼歯を抜歯しない方針をとること
が多いです。


治療後
1年9ヶ月の動的治療を行いました。 

DSC_0393.jpgDSC_4561.jpgDSC_4563.jpg
お口元の写真 
上の唇が少し前に出て、下の唇が少しへこんでいます。 上下の唇の厚み
が均一になっているでしょう? 
受け口の印象が軽減されていると思います。

DSC_4548.jpgDSC_4550.jpgDSC_4552.jpg
お口の中の写真
上顎前歯3本は前に出て正常な関係が得られました。
上顎の左側(むかって右側)の犬歯も、良い位置に移動しています。
機能も十分達成できています。
奥歯の上下のかみ合わせは、1対2歯に咬みこみ良好な状態です。


DSC_4553.jpgDSC_4554.jpg
評価
先にも述べましたように、下顎前突症例は小臼歯を抜歯しない方針を
とることが多いです。 これは下顎前突は、下顎が前に出ると同時に
大きな歯列をしているので、叢生(歯のデコボコ)が生じにくいのです。
一方、これとは逆に下顎前突症例は上顎が小さくて、叢生(歯のでこぼこ)
が生じることが多いです。 
 治療方針として考え方は、
1.小さな上顎歯列を拡大して叢生をなくして、下顎の歯列に合わせる。
2.上下顎の抜歯をして、大きな下顎の歯列を小さくし、上顎の歯列に合わ
  せる。
この二つが考えられます。 
お口元審美性や、結果の安定を考慮して方針を決めています。


●患者さんのご感想 

DSC_0296s.jpg
治療の進め方や、現時点の結果について
  最初は費用のことがとても心配でした。
  でも最初の説明がキッチリしていて決心できました。
  期間は思ったより短かく、あまり痛みもなくてあっという間でした。

先生への言葉
 治療以外のことでもメール相談にのっていただき、すぐに回答も
 いただいて安心して通院できました。
 また、大雨の日や子ども連れで来院でも親切に声をかけていた
 だけました。 京都からの通院でしたが、安心して続けることがで
き距離も苦にはならなかったです。